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平成24年度 第1回販売士塾報告 テーマ:『疲弊する商店街活性化事例と解説』 一過性の集客イベントから持続性のある施策へ 塾 長:大阪市信用金庫企業支援センター 企業支援アドバイザー 日比野俊之 氏 報告者:阿部孝男 平成24年度、第1回販売士塾が6月7日、マイドームおおさかで開催された。 塾長は大阪市信用金庫の日比野俊之氏。 商店街の活性化ほど重要でかつ以前より求められているテーマは少ない。 今回は中小企業とも密接な関係を築いている大阪市信用金庫の企業支援センター、企業支援アドバイザーという立場の日比野氏から、このテーマですでに成果の出ている具体的な話を伺うことができた。 商店街の活性化は本当に難しい問題で、どこにでも通用し、また永続する良策を探すのは至難である。そこで同金庫が先ず行ったことは「なぜ活性化が図れないのか」をメンバー全員で徹底的に調べ上げたことである。アンケートやヒアリングによって浮き彫りになったことが「集客効果の高いイベントの企画」と「空き店舗対策」の問題であった。これらの問題は商店街の方々も承知してはいるものの、ないないづくしの現状ではいかんともし難く、日比野さん達がそこを代わってプランニングに取組んだ。大阪の商店街の強みとは一体何なのかを徹底的に考え、「大阪の商店街の強みは何と言っても大阪で商売していることではないか」という結論に達した。この着想は正に灯台下暗しといえよう。さらにこの強みを生かす効果的なイベントをと考えたときに思いついたのが「大阪で商売することを他県に提案してはどうか」、各地方の特産品販売や文化、観光等のPRに商店街の空き店舗を活用してもらうというものである。これによって、課題であったイベントと空き店舗の問題が一挙に解決できるという、絶妙な企画に仕上がった。同金庫では「市信域街PLUS事業」と名付け、この企画を府下の商店街に働きかけていった。平成22年10月にトライアル事業として2地域で実施したのを皮切りに、現時点では180の物産展のコーディネートを行うという盛況ぶりとなっている。 商店街イベントというと単発だけ実施して終わるパターンが多い。永続的な支援策として、例えば商店街に空き店舗と複数の地方事業者が共同でアンテナショップを出店することによりローコスト化を図ることや、複数の出店希望者と複数の商店街をマッチングさせることで継続的にイベントを展開できることなどを考えて実施している。 大阪市信用金庫としてはこのような支援策を通じて、将来的に商店街とのお取引が発生すればと願っている。 また、さらなる課題として「地域になくてはならない商店街」の手助けということで、地域のニーズを商店街が取組むことを考えている。府下の多々ある問題の中で、特に待機児童問題、ひとり親就労問題、独居老人の見守りに焦点を当てて、これを商店街に取り込んで解決できないか、ということも考えている。 |
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企業支援アドバイザー 日比野俊之 氏よりの 当日の資料(先生の了解を得、掲載) 『市信PLUS事業』 疲弊する商店街活性化事例と解説 ~一過性の集客イベントから持続性のある施策へ~ 大阪市信用金庫 企業支援センター 日比野 俊之 1。当金庫の概要 当金庫は、昭和2年11月大阪市昭和信用組合として設立され、今年で85周年を迎えます。 大阪府下54店舗を有する当金庫は、お客さま、金庫、職員、三者相互の発展と幸せを築いていく 「三者共栄」の経営理念のもと、地域に密着した金融機関「信頼の輪を広げるコミュニティーバッ ク」として、持続的発展が可能な地域社会づくりへの貢献をめざし、地元の事業者や個人の皆さま との絆を深めてまいります。 地域密着型金融の取り組みの一つとして、平成19年11月、企業支援セッター が営業店と一体となって「市信PLUS事業」を立ち上げました。 今後とも当金庫の特徴である中小企業金融の強みを生かし、お取引先企業の発 展に取り組んでまいります。 2。市信PLUS事業とは? 取引先の販路拡大や商店街の活性化を機軸として、対象業種に偏ることなく展開し、 その事業全体を総称して市信PLUS事業とネーミングしています。 同事業は、取引先と関西に本社を置く大手メーカー等とのマッチッグを行う「① 販路拡大事業」、各種イベントの実施等を通じて地元商店街の活性化を支援する 「②地域活性化事業」、そして産学連携セミナーや技術的な講座(MOT講座)を開 催する「③経営者育成事業」の三つの柱から成り立っています。 今回紹介する商店街活性化の支援は、②地域活性化事業として推進されてい るもの。現在は「市信域街プラス事業」として、集客効果を狙った物産展の企 画・提案や空き店舗対策等に力を入れて取り組んでいます。 3.市信商店街PLUS事業 大阪の強みを活かした支援事業の構想をまとめる 平成21年8月に地域商店街活性法が施行されたことを契 機に、当金庫は本格的に商店街活性化に乗り出すこととなり ました。このとき、河村正雄理事長からは、「商店街活性化は 我々の使命。取引のあるなしに関わらず、大阪府下の商店街に 対して独自の支援プランを考えてほしい」という要請が発せられました。 企業支援センターのメンバーは「なぜ活性化が図れないのか」、その原因を徹 底的に調べることから着手しました。メンバー全員が手分けをして大阪府下取 引のある77の商店街を実地調査の開始。アンケート調査やヒアリング調査を通 して、商店街が抱える課題の明らかにしていきました。 現地調査の中で大きな課題として浮き彫りになったのが、「集客効果の高いイ ベントの企画」と「空き店舗対策」が困難であることがわかりました。 こうした課題を克服し、商店街に活気を取り戻すにはどうしたらよいか? 企業支援センターでは思案に暮れました。考え抜いた末、大阪の商店街の強み は何といっても大阪で商売していることではないかと気が付きました。それな ら、大阪で商売することを他県に提案してはどうかと考え、各地方の特産品販 売と歴史、文化、観光等の情報発信を商店街の空き店舗を活用して行う「市信 域街(いきがい)PLUS事業」の構想をまとめ上げ、大阪府下に33ある各県 の地方公共団体の大阪事務所を訪問。物産展の販売、観光・文化の発信事業の 開催企画の提案に奔走しました。 企業支援センターでは、「各地方公共団体は地元の特産品や観光等をPRしたい。 大阪の商店街は集客力あるイベントを打ちたい。商店街での物産展は両者に大 きなメリットがある。ここをつなげるのが信用金庫の責務ではないか?そんな 強い信念が活動の原動力となりました。 トライアルイベントで大きな成果をあげる 市信域街PLUS事業に賛同を得た地方公共団体とのネットワークの構築、 そして大阪府商店振興組合連合会をはじめ、大阪府下合計10の構成団体への事 業内容の説明を経て、平成22年10月、トライアル事業とし て次の2つの地域イベントで実施いたしました。 2つのトライアル事業で上々の滑り出しを見せた市信 域街PLUS事業。翌月の11月には、キックオフミーティン グの意味合いも込め、事業説明会を本店で開催いたしました。 参加者は大阪府下の主要商店街の役員や地方公共団体、支援機関の関係者です。 その後、当金庫の取組みは商店街、地方公共団体と各方面から注目を集める こととなり、現在までに、天神橋筋商店街、新世界地区商店街など約180の物 産展コーディネートを行いました。 日を追うごとに物産展コーディネートの予 約件数は積み上がり、本事業は、地域からからの手応えを感じました。 永続的に支援するためのメニューを準備中 市信域街PLUS事業は、街をキーワードにしています。そして、地域にプ ラス、商店街にプラス、地域外の生産者や情報発信者にもプラスになろうとい う協創事業の思いを込めてネーミングしました。我々としては、いまの商店街 活性化事業を決して一過性のイベント企画に終わらせたくありません。そのた め永続的に地元商店街を支援していくような企画も考えています。 いま手掛けている物産展コーディネート事業は、①商店街イベント参加方式 と呼ばれるものです。つまり、当金庫のネットワーク(地方公共団体、信用金 庫)を活用して夏祭りなどの商店街イベントに、他県の特産品の生産・販売業 者を紹介して物産展を開催するという内容です。支援メニューには、このほか ②共同アンテナショップ方式、③直売キャラバン方式の用意を進めています。 ②共同アンテナショップ方式とは、商店街に常設店舗を出したいがコスト面 から難しいと考える地方公共団体や生産・販売事業者を複数集め、共同でアン テナショップを出店するというもの。空き店舗を複数人で借りれば、非常に割 安なコストで出店が可能となります。 もう一つの③直販キャラバン方式は②の発展形。複数の商店街と契約する ことで、地方公共団体や生産・販売事業者は各商店街の空き店舗を巡回するよ うに店を移転していくものです。 例えば、12の地方公共団体や生産・販売業者が12の商店街と契約すれば、毎月 アンテナショップを移転することも可能です。これならば「常設店を出したい が、あきられるリスクがある」と考える先にも提案することができます。 さらに「大阪で新商品を試験的に販売して、消費者の反応を確かめたい」と いうような場合、複数の商店街で販売できるため、大阪を面で捉えてテストマ ーケティングすることもできます。大阪府下の各商店街と取引がある、当金庫 のコーディネート機能がフルに発揮できる支援策と考えています。 待機児童問題など地域の課題解決にも取り組む 現在、企業支援センターには、地元の商店街から「地域になくてはならない 商店街になりたい」という声がアンケートなどを通じて寄せられています。目 下のところ、ごの解決策の提案が次期の課題です。 「これも難問ですが、私どもでは地域になくてはならない商店街というのは、 地域の課題を解決する商店街ではないかと考えました。そこで、大阪府下の行 政機関を訪問して地域の課題をヒアリングすると、それは待機児童問題とひと り親就労問題などでした。大阪ではこの2つの問題は裏腹の関係にあり、所得 が少ないから保育園に預けられない、保育園に預けられないから働けずに所得 が少なくなるという悪循環に陥っています。こうした地域の課題解決に成功す れば、地域になくてはならない存在になれると考えています。 実は、この課題に対しても一定の方向性は見えています。それは、商店街の 空き店舗を利用して「マイクロ保育所」を作るという案です。実現すれば地域 の雇用促進にもつながると思い構想を企画しています。 今後も、我々信用金庫が地域と地域を結ぶ、人と人を結ぶ、そして事業とし て協創関係を築くことで地域に新たなPLUSを提供することで活性化の一助にな ればと思います。 |
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